鳥無き里の蝙蝠(とりなきさとのこうもり)
ある遠い山間の村、名もなき里には、かつて鷹や鷲といった立派な鳥たちが空を舞っていました。しかし、時代が変わり、今ではその姿を見ることはなくなりました。代わりに、村には小さな蝙蝠が多数生息するようになり、その中でも一匹の蝙蝠が村を支配するようになっていました。
この蝙蝠の名は「クロ」といい、彼は賢く、狡猾で、他の動物たちから恐れられていました。クロは自分の小さな体でも、村の平和を守るために一生懸命に働いていました。しかし、その実、彼は村の住民たちを操り、自己の利益を追求していたのです。
村の住民たちは、クロの指示に従うことが平和を保つための唯一の方法だと思っていました。クロは夜になると静かに飛び回り、村の様子を監視していました。そして、問題が起こると素早く対応し、その巧みな舌で住民たちを説得し、彼らの心を掴んでいました。
ある晩、若い狐の「キツネ」が村にやってきました。彼は他の土地から追われ、この村に辿り着いたのです。キツネは賢く、好奇心旺盛で、この村の異様な雰囲気に気づきました。彼は村の人々がクロに従っていることに疑問を持ち、真実を探ることに決めました。
キツネは夜中に村を歩き回り、クロの動向を監視しました。ある夜、キツネはクロが村の隅で密かに何かを計画しているのを目撃しました。クロは村の宝物を自分のものにしようとしていたのです。キツネはその現場を抑え、翌日村の住民たちに真実を告げました。
初めは住民たちも信じられませんでしたが、キツネの言葉に耳を傾け、クロの行動をよく観察するようになりました。やがて、クロの本性が明るみに出ると、住民たちは彼を追放することを決意しました。
クロは「鳥無き里の蝙蝠」であったことを認識し、自分の行いを反省しました。しかし、村を去るとき、彼はキツネに向かって言いました。「お前がいなければ、私はこの村の王であり続けることができたのに。」
キツネは静かに答えました。「真の王は力や狡猾さでなく、信頼と誠実さで支配するものだ。お前がそれを学んでいれば、この村はもっと幸せで平和であっただろう。」
クロが去った後、村は再び平和を取り戻しました。キツネは村の人々と共に新しい生活を始め、彼らは互いに助け合いながら、真の平和を築いていきました。
「鳥無き里の蝙蝠」の教訓は、村の人々にとって重要な教えとなり、誰もが自分の行いを振り返り、誠実に生きることの大切さを心に刻みました。
ことわざから小説を執筆 #田記正規 #読み方
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