朝三暮四(ちょうさんぼし)
昔々、ある小さな村にトウという名の男が住んでいた。トウは狡猾で抜け目がない性格で、自分の利益のためならどんな手段もいとわなかった。彼は村人たちを騙して、自分の思い通りにすることがしばしばあった。
ある日、トウは大きな猿を飼うことにした。猿たちは賢くて働き者で、トウの仕事を手伝ってくれることが期待された。しかし、猿たちを養うためにはたくさんの食べ物が必要だった。そこでトウは、猿たちに餌の配給を工夫することにした。
トウは猿たちに、「朝に三つの餌、夕方に四つの餌を与える」と言った。猿たちはすぐに不満を抱き、「それでは足りない」と文句を言った。トウは考えを変え、「それなら、朝に四つの餌、夕方に三つの餌を与える」と言った。猿たちはこの提案を聞いて喜び、「それなら良い」と納得した。
トウは心の中で笑い、「結局、与える餌の量は同じだが、猿たちは自分たちが得をしたと思っている。これで私も猿たちも満足だ」と考えた。
しかし、猿たちは徐々にトウの狡猾さに気づき始めた。彼らは互いに話し合い、「トウは私たちを騙している。朝三暮四というやり方で、結局私たちは同じ量の餌しかもらっていない」と気づいた。
猿たちは一致団結してトウに抗議することにした。ある日、彼らはトウの家に集まり、「トウ、私たちはもうあなたの騙しには耐えられない。餌の配給を公平にしてくれ」と要求した。
トウは驚き、「どうしてそんなことを言うのか? 私はあなたたちのために最善を尽くしている」と言った。しかし、猿たちは譲らず、「私たちを騙していたことはもう分かっている。これからは私たちに平等に餌を分けてくれ」と強く主張した。
トウは仕方なく、猿たちの要求を受け入れることにした。彼は猿たちに平等に餌を配るようになり、猿たちは満足した。そして、猿たちの働きも以前よりも効率的になり、トウもその恩恵を受けることができた。
この出来事を通じて、トウは学んだ。「朝三暮四のような狡猾な手段では、長続きしない。誠実に接することこそが、真の信頼と協力を得る方法だ」と。
その後、トウは村人たちにも誠実に接するようになり、村全体が平和で協力的なコミュニティとなった。村人たちはトウの変化を喜び、彼を信頼するようになった。
ことわざから小説を執筆 #田記正規 #読み方
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