旅の恥は掻き捨て(たびのはじはかきすて)

アヤは仕事のストレスを解消するため、一人旅に出ることにした。彼女は南の島へ向かうことを決め、そこでは誰も彼女を知らない。普段の堅苦しい生活から離れ、自由な時間を楽しむつもりだった。


島に到着したアヤは、まずは観光名所の一つである美しいビーチに向かった。ビーチでは多くの観光客がリラックスして過ごしており、アヤもその雰囲気にすぐに溶け込んだ。彼女はビーチチェアに腰を下ろし、海の音を聞きながら本を読み始めた。


しかし、その時、一人の地元の若者が声をかけてきた。「こんにちは。旅行中ですか?」


「はい、そうです。あなたは地元の方ですか?」アヤは微笑んで答えた。


「そうです。この島で育ちました。良ければ島の隠れたスポットを案内しましょうか?」と若者は親切に申し出た。


アヤは少し戸惑ったが、好奇心が勝った。「それは素晴らしいですね。ぜひお願いします。」


若者の名前はカズキで、彼は島の隠れた美しい場所を次々と紹介してくれた。アヤは彼のおかげで、普通の観光客では見つけられないような素晴らしい景色を楽しむことができた。


ある日、カズキはアヤを地元の祭りに連れて行った。祭りの雰囲気は活気に満ち、アヤは自然と笑顔になった。しかし、彼女は一つの挑戦を受けることになった。


「アヤさん、この祭りの伝統的な踊りに参加してみませんか?」とカズキは提案した。


「でも、私は踊りが得意じゃないし、恥ずかしいです」とアヤは躊躇した。


「大丈夫ですよ。『旅の恥は掻き捨て』って言うじゃないですか。ここでは誰もあなたを知らないし、楽しむことが大事です」とカズキは励ました。


アヤはその言葉に勇気を得て、踊りの輪に加わることにした。初めはぎこちなく、周りの人々に笑われることもあったが、次第にリズムに乗り、心から楽しむことができた。


祭りが終わると、カズキは笑顔で言った。「ほら、楽しかったでしょう?」


「本当に楽しかったです。恥をかくことなんて、全然気にならなくなりました」とアヤは笑顔で答えた。


その夜、アヤはカズキと一緒にビーチで星空を眺めながら、旅の意味を考えていた。旅は新しい経験をし、未知の世界に飛び込むことで成長できる。恥をかくことを恐れず、自由に楽しむことが大切なのだ。


「旅の恥は掻き捨て、ですね」とアヤはつぶやいた。


「そうです。旅先では自分を解放し、新しい自分に出会えるものです」とカズキは答えた。


アヤはこの旅で得た経験と友人との出会いを胸に、再び都会の生活に戻る日を迎えた。彼女はこれからも新しい挑戦を恐れず、自由な心で生きていこうと決意したのだった。


ことわざから小説を執筆
#田記正規 #読み方

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