山椒は小粒でもぴりりと辛い(さんしょうはこつぶでもぴりりとからい)
「小さな挑戦者」
町外れの学校に通う小学5年生の美咲は、いつもクラスで目立たない存在だった。背が低く、声も小さいため、発言するときも誰も気に留めないことが多かった。しかし、美咲には一つ、誰にも負けたくないことがあった。それは、毎年行われる学校の短距離走大会だった。
体育の時間、クラスメイトたちは大きな声で談笑しながら走り回っていたが、美咲は黙々と一人で走る練習を続けていた。背が低いせいで、他の子より足の歩幅が狭い。美咲は自分がいつも最下位だったことに悔しさを感じていたが、その悔しさをバネに、家でも毎日自主的にランニングを重ねていた。
「小さくても、負けたくないんだ」と美咲は心に誓っていた。
そして、待ちに待った大会当日。学校のグラウンドには大勢の生徒たちが集まり、応援の声が響いていた。美咲のクラスでも、足が速いと評判の男子たちが「俺が一番だ」と自信満々に話していた。
「美咲、お前は最後だな、どうせ」とからかう声も聞こえてきたが、美咲は気にしなかった。彼女は自分の努力を信じ、勝つことを目指していた。
スタートの合図が鳴り、美咲は一斉に走り出した。最初はやはり、背の高いクラスメイトたちが前に出た。しかし、美咲は自分のペースを崩さず、全力で地面を蹴り続けた。少しずつ、彼女は前の選手に追いついていく。
最後の直線に入ると、クラスの中で最も速いとされる男子が先頭に立っていたが、美咲はその背中をじりじりと追い詰めた。そして、ゴール直前で彼を抜き去り、先頭でゴールラインを駆け抜けた。
その瞬間、観客席はどよめきと拍手に包まれた。クラスメイトも驚きの表情を浮かべ、誰もが信じられない様子だった。美咲は息を切らしながらも、満足そうに微笑んだ。
「すごい、あの小さな美咲が…」と、周囲の声が聞こえてくる。
その日の表彰式で、美咲は金メダルを首にかけられた。背が低く、目立たない存在だった彼女がクラスの誰よりも速く走ったことに、全員が驚かされていた。
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」と、体育の先生が笑いながら美咲に声をかけた。「小さくても、お前の努力と根性は本当に素晴らしかったよ。これからも自分を信じて、どんな挑戦にも向かっていけ!」
美咲は誇らしげに微笑み、その言葉を胸に刻んだ。彼女は、自分の小ささを恥じることなく、むしろその特性を武器にして、どんなことにも挑戦し続けることを決意した。
ことわざから小説を執筆 #田記正規 #読み方
コメント
コメントを投稿