大山鳴動して鼠一匹(たいざんめいどうしてねずみいっぴき)
ある日のこと、町中に大きな騒ぎが起こった。「山が動き出した!」という噂が瞬く間に広まり、人々は不安に駆られてざわめいた。山の麓にある小さな村では、村長が急いで住民を集め、緊急の会議を開いた。
「皆、大変だ!もし山が崩れたら、村全体が危険にさらされるかもしれない。すぐに避難の準備をするんだ!」
村の男たちは斧や鍬を手に取り、家々の補強を始め、女たちは貴重品や食料をまとめ、子供たちを連れて高台へ避難させようとした。村は緊張感に包まれ、何が起きるかわからない恐怖に怯えていた。
しかし、時間が経っても山からは何の動きも見られなかった。ただ、静かな森がそこに広がるばかりだ。村人たちは次第に落ち着きを取り戻し、村長は山の様子を確認するため、数人の若者を派遣した。
数時間後、若者たちは戻ってきたが、彼らの表情には困惑の色が浮かんでいた。
「村長、山は何も変わっていません。ただ、木の陰から一匹の鼠が出てきただけです。どうやら山が鳴動したというのは、誰かが見間違えたか、ただの噂だったようです。」
村長はその報告を聞き、安堵のため息をついた。大騒ぎしていた村人たちも、次第に笑いがこみ上げてきた。
「大山鳴動して鼠一匹、とはこのことか。」村長は苦笑いしながら、そう呟いた。
村の騒動は収まり、日常が戻ってきた。しかし、今回の出来事は村人たちに一つの教訓を与えた。大げさな噂や不確かな情報に振り回されることなく、冷静に状況を見極めることが大切だということを。
そして、村の人々は再び平穏な日々を取り戻しつつも、互いに声を掛け合い、誤解や噂に惑わされないよう心掛けるようになった。村長もまた、今後は慎重に物事を判断することを誓ったのだった。
ことわざから小説を執筆 #田記正規 #読み方
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