大海は芥を択ばず(たいかいはあくたをえらばず)
昔、ある広大な王国があり、その王国を治めていたのは、寛大で賢明な王であった。王は、どんなに小さなことでも気にかけ、国民全員が幸福に暮らせるよう心を砕いていた。彼の治世は長く、王国は平和と繁栄に包まれていた。
ある日、王のもとに一人の若者がやってきた。彼は農村で生まれ育ったが、運悪く生まれつき足が不自由で、周囲からは「何の役にも立たない」と言われていた。しかし、彼は自分の存在価値を証明したいと強く願い、王に直訴することを決心したのだった。
「陛下、私は足が不自由で、何の取り柄もありません。しかし、どうか私にも何か役割を与えていただけないでしょうか。私はこの国に何か貢献したいのです。」
王はその言葉を聞き、少し考えた。そして、若者に言った。「君の志は素晴らしい。人は皆、役割を持つべきだ。私は君に、この王国の見張り塔の管理を任せたい。君のような者がその任務を担うことで、この国全体が安心して暮らせるようになるだろう。」
若者はその言葉に驚き、感激した。彼は全力でその任務に取り組み、見張り塔を完璧に管理した。その結果、王国はさらに平和で安全な場所となり、若者は自信を取り戻した。
やがて、王国の人々は彼の努力を知り、彼を称賛するようになった。彼の仕事ぶりは、誰にも負けないほど丁寧で正確だった。周囲の人々も、彼が不自由であっても、王国にとって欠かせない存在であることを認めた。
王はその様子を見て微笑んだ。「大海は芥を択ばず」という言葉の通り、どんな人間もその価値がある。海は小さなゴミを拒まないように、私の国も一人一人を大切にし、すべての者がその役割を果たせる場所でありたい。誰もがその存在を認められ、安心して暮らせる王国が真の繁栄をもたらすのだと王は信じていた。
こうして、王国はますます繁栄し、すべての国民が幸福に暮らせる場所となった。そして、若者は自らの努力と王の寛大さによって、新たな人生を切り開き、王国の発展に貢献し続けたのだった。
ことわざから小説を執筆 #田記正規 #読み方
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