宋襄の仁(そうじょうのじん)

 宋襄の仁


戦国時代、国の守りを固めるために、常に戦の準備が怠られない時代。ある小国、燕国(えんこく)の将軍である斉田(さいでん)は、戦場で名を馳せた英雄であり、冷静な判断力と鋭い戦術で数々の勝利を収めてきた。


ある日、燕国は隣国である楚国(そこく)との戦を余儀なくされた。楚国は軍勢が多く、戦力では燕国を圧倒していたが、斉田は兵を緻密に配置し、戦術を駆使して優位に立っていた。戦いは激化し、楚国の兵は次々と倒れ、ついには楚国の将軍が捕えられる寸前まで追い詰められた。


しかし、その瞬間、斉田は手を止め、楚国の将軍に声をかけた。「お前たちが降伏すれば、命は助けてやる。無益な戦を続けるより、今ここで降伏し、和平を結ぶのが賢明だ」


楚国の将軍はその申し出に驚き、しばらく考え込んだ後、静かに首を振った。「我が国はまだ負けていない。我々は戦いを止めるつもりはない」


斉田はその言葉を聞き、深くため息をついた。「お前たちは誇り高いが、それが国を滅ぼすことになる。だが、俺は無駄に血を流させるわけにはいかない」


斉田は命令を下し、攻撃を中断した。彼は楚国の兵たちが撤退するのを見届け、その場で兵を引いた。彼は戦を終わらせるために相手に情けをかけたつもりだった。


しかし、その数日後、楚国は再び攻撃を仕掛けてきた。楚国は戦力を整え、再び燕国に攻め入ってきたのだ。斉田の軍はすでに疲弊しており、反撃する力を失っていた。結果として、燕国は楚国に敗れ、大きな被害を被ることとなった。


斉田は戦後、深く後悔した。自分が情けをかけた結果、国を危機に晒してしまったことを痛感した。彼の仁慈は無駄であり、むしろそれが国を危うくする原因となったのだ。


「宋襄の仁とは、まさにこのことだ」と、彼は自らを嘲笑するように呟いた。


斉田は戦術に長けていたが、戦の本質を見誤ったことで国を危険に晒してしまった。この経験は、彼にとって大きな教訓となったが、それが国の運命を変えるには遅すぎた。





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