蛇の道は蛇
蛇の道は蛇
古川剛志は長年警察官として働いてきたが、最近では新しい世代の捜査手法に疎くなっていることを感じていた。とくに、ネット犯罪や暗号通貨を絡めた詐欺事件の捜査は、彼にとって未知の領域だった。そんな中、彼が担当することになったのは、町を騒がせている高齢者詐欺グループの摘発だった。
「今の詐欺は、昔と全然違う。詐欺師たちは、インターネットやSNSを使って巧妙に罠を張っているんです」と、若手捜査員の山田が説明していた。古川は何度も頷きながら聞いていたが、内心では「昔のやり方の方がもっと人間味があった」と思わずにはいられなかった。
その日、古川は過去に逮捕した詐欺師の一人、石田の情報を思い出した。石田はかつて、町中で名を馳せた詐欺師だったが、今では足を洗い、静かに暮らしていると聞いていた。古川は「蛇の道は蛇」という言葉を信じ、石田なら今の詐欺の裏事情について何か知っているかもしれないと考え、彼を訪ねることにした。
「お久しぶりです、石田さん」と古川が声をかけると、石田は少し驚いた顔をして迎え入れた。「何年ぶりだな、古川さん。まさか、俺にまた用事があるとは思わなかったよ。」
古川は本題に入った。「最近、この町で高齢者詐欺が横行している。昔の手口とは違うらしいが、石田さんなら何か心当たりがあるんじゃないかと思ってな。」
石田は一瞬考え込むような表情をしたが、すぐに笑みを浮かべた。「蛇の道は蛇、か。確かに、詐欺の世界には今でも俺の知り合いがいるさ。新しいやり方だろうと、詐欺は詐欺。基本的な心理の読み合いは変わらない。情報を集めてみる価値はあるかもしれないな。」
石田はその後、古川に最新の詐欺手口について話し始めた。詐欺グループがどのように高齢者をターゲットにし、巧みに信用させるか、そして暗号通貨を使ったマネーロンダリングの方法まで、詳細に説明した。
「どうだ?今の詐欺師たちも、昔と変わらないだろう?」と石田は言った。古川は感心しながら頷いた。「確かに、技術は変わっても、詐欺の本質は同じだ。やはり『蛇の道は蛇』だな。」
古川はその後、石田から得た情報をもとに、若手捜査員たちと協力し、詐欺グループのアジトを突き止めることに成功した。捜査は無事に終わり、詐欺グループは全員逮捕された。
ことわざから小説を執筆 #田記正規 #読み方
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