三人寄れば文殊の知恵(さんにんよればもんじゅのちえ)
「小さな会議室」
地方の小さな町工場で働く一ノ瀬、村田、佐々木の三人は、ある日、社長から突然呼び出された。新製品の開発が滞っているため、チームでアイデアを出してほしいというのだ。三人はお互いに顔を見合わせたが、特にこれといったアイデアもないまま、会議室に集まった。
「いや、俺たちにそんな大事な役割を任せても、何も出てこないよな」と、一ノ瀬が苦笑いしながら言った。村田も同意して、「そうだな。技術的な知識もないし、経営のことも分からない」とため息をついた。
佐々木は、机に広げた白紙のノートを見つめながら、「でも、社長が頼んでくれたんだし、なんとか頑張ってみよう」と、前向きに提案した。
最初のうちは、三人とも戸惑い、話はなかなか進まなかった。どこから手をつければいいのか、何を考えればいいのかも分からない。けれども、雑談の中でふとした瞬間に、佐々木が言った。「そういえば、俺たちの工場で余ってる材料があったよな。あれ、何かに使えないかな?」
「それなら、リサイクル製品とか作れるかもな」と、一ノ瀬が続けた。
「うん、それなら環境に優しいし、売り込みやすいかも。でも、何を作ればいいんだろう?」村田が首をかしげる。
その瞬間、三人は一斉に顔を見合わせた。「再利用できる簡単な日用品、例えば…エコバッグとか、ポーチとかはどうだ?」と佐々木が提案すると、他の二人も頷いた。
「それなら、今まで廃棄していた素材を有効活用できるし、コストも抑えられるな!」一ノ瀬は興奮気味に言い、村田も「これなら、環境への配慮もアピールできるし、うちの工場の新たな強みになるかも」と同意した。
その後、三人はそれぞれの強みを活かして、デザイン、材料の調達、製造工程の効率化を考え始めた。アイデアが次々と出てきて、会議室は活気に満ちていった。
数週間後、三人が考えたエコバッグの試作品が完成した。これまでの製品にはなかった新しい視点が取り入れられ、リサイクル素材を使ったことで、コスト削減と環境配慮を両立した商品となった。
社長は驚き、笑顔で三人にこう言った。「まさか、こんなに素晴らしいアイデアが出てくるとは思わなかった。やっぱり、三人寄れば文殊の知恵だな!」
三人は照れ笑いを浮かべながらも、互いに肩を叩き合った。自分たちが信じられないほど、良いアイデアが出たことに驚いていたが、何よりもチームワークの力を実感していた。
ことわざから小説を執筆 #田記正規 #読み方
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