三顧の礼(さんこのれい)
「再びのお願い」
小さな町工場を経営している拓也は、経営の立て直しに頭を抱えていた。資金繰りは厳しく、従業員の給料もままならない状況だった。かつては町で評判の工場だったが、時代の変化とともに注文は減り、立ち行かなくなっていた。
ある日、拓也は知人からある噂を聞いた。「経営コンサルタントの山本は、数多くの企業を救った天才だ」という話だった。最初は半信半疑だったが、背に腹は代えられないと考え、山本に連絡を取ることにした。
しかし、山本は忙しいと言って、なかなか会ってくれなかった。やむなく、拓也は直接山本のオフィスに足を運び、会う機会を得ようとしたが、やはり断られた。普通ならここで諦めるところだが、拓也は工場を再興するためならと、もう一度挑戦することを決意した。
二度目の訪問も、結果は同じだった。山本は多忙を理由に、依頼を引き受けてくれなかった。だが、拓也の心は折れなかった。彼は諦めず、さらにもう一度だけ挑戦することにした。
三度目の訪問。今回は、拓也はこれまでの苦境や工場への熱い思いを全て伝えた。「この工場は、父の代から続いています。私にとって、家族そのものなんです。どうか力を貸してください」と、涙ながらに語る拓也の姿に、山本はついに心を動かされた。
「分かりました。あなたの熱意に打たれました。協力しましょう。」
こうして山本は、拓也の工場の経営再建に乗り出した。コンサルティングが始まると、工場の無駄を徹底的に削減し、新しいビジネスモデルを導入することで、徐々に工場は回復し始めた。数ヶ月後には、町で評判の工場へと再び成長を遂げた。
ことわざから小説を執筆 #田記正規 #読み方
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