秋の日は釣瓶落とし

 秋の日は釣瓶落とし(あきのひはつるべおとし)

■ 意味

秋の日は、井戸の釣瓶(つるべ=桶)が落ちるようにあっという間に暮れてしまうという意味。

転じて、「物事の移ろいが早く、油断していると終わってしまう」ということのたとえにも使われます。


■ 解説

井戸の釣瓶は、重力でストンと一気に落ちる。その様子に、秋の夕暮れの早さを重ねたことわざです。

秋は日没が急に早くなるため、昔の人は驚きとともにこう表現しました。


■ 類義語

秋の夕暮れ


光陰矢の如し


一日千秋


■ 用例

「まだ3時なのにもう暗い。秋の日は釣瓶落としだな」


「決断を先延ばしにしていたら、季節が変わってたよ。まさに秋の日は釣瓶落としだ」


■ 短編小説:『落日、ひとしずく』

あらすじ(プロット)

東京で働く若手会社員・佐伯は、過労と失恋で心を病み、故郷の信州に帰る。

夕暮れの野原を歩く中、彼は幼なじみの紗耶に再会する。

紗耶は病を抱えながら、静かに絵を描き続けていた。


二人は言葉少なに日々を過ごし、少しずつ心が通う。

ある秋の夕暮れ、彼女がぽつりと言う。「秋の日は釣瓶落とし。何もかも、早すぎるのよ」

数日後、彼女はこの世を去る。


残されたスケッチブックには、一面の金色のススキ野原と、「あなたと過ごせた秋、ありがとう」と書かれていた。


佐伯は再び東京に戻り、彼女の描いた夕暮れの絵を部屋に飾る。

それは、釣瓶のように早く過ぎた季節の、何よりも重い記憶だった。



ことわざから小説を執筆
#田記正規 #読み方 #家族 #実家 #会社

コメント

このブログの人気の投稿

前車の轍(ぜんしゃのてつ)

山椒は小粒でもぴりりと辛い(さんしょうはこつぶでもぴりりとからい)