池魚の災い(ちぎょのわざわい)
ある静かな村の外れに、大きな池があった。その池には、色とりどりの魚たちが平和に暮らしていた。池の周りには美しい花々が咲き、村の人々も時折、池のほとりで憩いのひとときを過ごしていた。
しかし、ある日、その平和な村に戦争の噂が流れ込んできた。隣村と領土を巡る争いが激化し、戦火が近づいているというのだ。村人たちは不安に包まれ、戦いに巻き込まれることを恐れていた。
村の長老、タケダは村人たちを集めて言った。「我々は平和を望んでいる。しかし、戦いが避けられないなら、どうすれば村とこの美しい池を守ることができるか、皆で考えなければならない。」
その夜、タケダは池のほとりで考え込んでいた。ふと、池の中で泳ぐ魚たちを見て、彼はため息をついた。「池魚の災い」ということわざが頭をよぎった。魚たちは何も知らず、ただ静かに泳いでいる。しかし、もし戦争が始まれば、この池もまた、争いの犠牲になるだろう。
タケダは村人たちに向かって再び語りかけた。「池魚の災いを避けるためには、私たちが何か行動を起こさなければならない。この池と私たちの平和な暮らしを守るために、隣村との対話を試みようではないか。」
翌朝、タケダと数人の村人たちは、隣村へと向かった。彼らは武器を持たず、代わりに白い布を掲げて平和の意志を示した。隣村の長老、ヤマダは彼らの到来に驚いたが、その誠意を受け入れ、話し合いの場を設けた。
タケダはヤマダに向かって丁寧に話した。「私たちの村も、あなた方の村も、平和を望んでいるはずです。戦いによって失うものは多く、得るものは少ない。どうか、話し合いによって解決の道を見つけましょう。」
ヤマダは一瞬黙り込んだ後、深いため息をついて答えた。「確かに、戦いは何も生まない。我々もまた、平和を望んでいます。どうか、お互いに歩み寄り、解決策を見つけましょう。」
その後、両村の長老たちは何度も会議を重ね、ついに合意に達した。領土問題は共同管理の形で解決され、争いの火種は取り除かれた。村人たちは安堵し、再び平和な日々が戻ってきた。
池のほとりで、タケダは再び魚たちを見つめた。「池魚の災いを避けるために、私たちは正しい選択をした。争いを避け、平和を築くことができたのだ。」魚たちは何も知らず、静かに泳いでいたが、その姿はまるで村の未来を象徴しているかのようだった。
村人たちはこの出来事を忘れず、次の世代にも語り継いだ。平和を守るための努力と対話の重要性を、誰もが心に刻んでいた。
ことわざから小説を執筆 #田記正規 #読み方
コメント
コメントを投稿