旅は道連れ世は情(たびはみちづれよはなさけ)
暖かい春の日差しの中、ハルカは一人で旅に出ることを決めた。都会の喧騒から離れ、自然の中で心を癒すための旅だった。ハルカは背中にリュックサックを背負い、田舎道を歩き始めた。
道中、ハルカは一人の老人に出会った。老人は小さな荷車を引きながら、ゆっくりと歩いていた。ハルカは自然とその老人に声をかけた。「こんにちは。どちらまで行かれるのですか?」
老人は微笑みながら答えた。「こんにちは。私はこの先の村に向かっています。あなたは?」
「私は旅の途中です。特に目的地はないのですが、自然の中で心を癒したくて」とハルカは答えた。
「それなら、良ければ一緒に行きませんか?旅は道連れ、世は情ですから」と老人は誘った。
ハルカはその言葉に心を打たれ、一緒に行くことにした。二人は歩きながら、互いに話をし始めた。老人の名はケンジと言い、彼はこの辺りの土地に詳しいことを話してくれた。
「この道を行くと、素晴らしい景色が見える丘があります。そこからの眺めは本当に美しいですよ」とケンジは言った。
「それは楽しみです。ケンジさん、あなたはとても親切ですね」とハルカは感謝の意を示した。
「旅は道連れ、世は情。人との出会いが旅を豊かにするんですよ」とケンジは穏やかに答えた。
その後、二人は丘の頂上にたどり着いた。そこから見える景色は、ハルカが想像していた以上に美しかった。広がる緑の草原と、遠くに見える山々。ハルカはその美しさに感動し、しばらくの間、言葉を失った。
「本当に素晴らしいですね」とハルカはつぶやいた。
「そうでしょう。この景色を見ると、日々の悩みが小さなものに感じられます」とケンジは頷いた。
その後、二人は村に向かって歩き続けた。村に着くと、ケンジはハルカを自分の家に招いた。ケンジの家は古いけれど、温かみのある家だった。ハルカはケンジの家族とも交流し、彼らの温かさに触れた。
「ここで少し休んでいきなさい。旅はまだ続くでしょうけど、ゆっくりしてから行くのもいいものですよ」とケンジの妻、エミが言った。
ハルカはその言葉に甘え、ケンジの家で数日を過ごした。その間、村の人々とも交流し、彼らの親切さと温かさに心が癒された。
そして、旅立ちの日が来た。ハルカはケンジとエミに別れを告げ、再び旅の道を歩き始めた。
「ケンジさん、エミさん、本当にありがとうございました。あなたたちのおかげで、この旅が素晴らしいものになりました」とハルカは感謝の気持ちを伝えた。
「こちらこそ、ハルカさん。あなたとの出会いもまた、私たちにとって大切な思い出です。どうか気をつけて、良い旅を」とケンジは微笑んだ。
ハルカは新たな道を歩きながら、ケンジの言葉を思い出していた。「旅は道連れ、世は情」。人との出会いが、旅を豊かにするのだと実感したハルカは、これからも心を開いて新しい出会いを楽しもうと決意したのだった。
ことわざから小説を執筆
#田記正規 #読み方
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