一言以って之を蔽う
一言以って之を蔽う(いちごんもってこれをおおう)
意味
「一つの言葉で、その人や物事の本質すべてを言い表すことができる」という意味の故事成語です。
また、「一つの言葉で評価をまとめてしまうこと」や、「一言が全体を象徴するような重みを持つこと」にも使われます。
出典
中国の古典『論語』衛霊公篇。
孔子が弟子の子貢に、「仲弓という弟子をどう思うか」と問われたときに、
「一言以って之を蔽う。恭也(うやうやしきなり)」
――「“恭しい(礼儀正しい)”という一言で、彼は言い尽くせる」と評しました。
つまり、一つの言葉がその人のすべてを表している、という意味です。
ニュアンスと使い方
この言葉は、対象の本質を見抜き、簡潔に評価する際に用いられます。
賞賛としても、批判としても使うことができます。
例文:
「彼を一言以って之を蔽うなら、誠実、だな」
「社長の一言で会社全体の空気が変わる。一言以って之を蔽う、とはまさにこのこと」
「その一言が彼のすべてを物語っていた。良くも悪くも、一言以って之を蔽うのは怖いことだ」
小説アイデア:
タイトル:『一言名鑑』
新卒採用面接にて。とある企業の最終面接では、社長自らが面接官として登場し、受験者の「たった一言」だけで合否を決めるという奇妙なルールを設けている。
ある受験者は言葉を選びすぎて何も言えず落ち、ある者は熱く語りすぎて本質を見失う。
最後に残ったのは、何の飾りもない一言を投げかけた青年だった。
「どうしてそんな言葉を選んだのか」と問われたとき、彼は静かに笑う。
「自分が一番怖かった言葉だからです。でも、それが僕の今なんです」
社長はその一言に深く頷いた。
「一言以って之を蔽う、とはまさにこれだな。合格だ」
この故事は、人物描写や物語の“締め”に使うと深みが出ます。
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