秋の扇

 秋の扇(あきのおうぎ)

■ 意味

秋になって使わなくなった扇のこと。

転じて、「一度は寵愛されたが、時が過ぎて捨てられた女性のたとえ」として使われます。

また、物や人の栄華・関心が移り変わりやすいことの象徴でもあります。


■ 解説

夏の間は重宝された扇(おうぎ)も、涼しくなれば使い道を失い、やがて忘れ去られます。

そのように、「時節が過ぎると用済みとされる物や人のはかなさ・無情」を象徴する言葉として使われてきました。

とくに、恋愛の比喩として使われることが多いです。


■ 用例

「あの人も、社長が交代してからは秋の扇だね」


「一夜の寵愛も、秋の扇のように風に消えた」


■ 類義語

昨日の花


去年の雪


見捨てられた恋人


■ 短編小説:『秋の扇』

あらすじ(プロット)

舞妓として名を馳せた「千代」は、かつて数多の男たちの心を惑わせた花のような存在だった。

しかし時は流れ、若い舞妓が次々と台頭し、彼女の出番は徐々に減っていった。


ある秋の日、馴染みだった実業家・吉岡が久しぶりに店を訪れる。

千代は懐かしさよりも、なぜ今さらという思いを抑えられず、静かに言った。


「秋の扇のような女に、また風は吹くんどすか?」


吉岡は言葉に詰まり、黙って盃を置いて去っていった。

残された千代は、扇を一つ取り出し、自分の手でそっと畳んだ。


「華やかさは、風が吹いてこそ。あとは、置かれるだけ――」



ことわざから小説を執筆
#田記正規 #読み方 #家族 #実家 #会社 


コメント

このブログの人気の投稿

前車の轍(ぜんしゃのてつ)

山椒は小粒でもぴりりと辛い(さんしょうはこつぶでもぴりりとからい)